歯石除去手術について

Tooth scalling Surgery

  • 当院の施術の特徴
  • 無麻酔歯石除去処置について
  • 全身麻酔について
  • 費用
  • よくある質問

当院の施術の特徴

手術と、その先のことを考えた
「PVP」というアプローチ

「手術後、病院嫌いに…」そんなお声をよく耳にします。
「しつけは家庭の問題」と、動物のストレスを見過ごしがちな獣医師も少なくありません。しかし、ペットにとって動物病院は大きなストレス源。人間の子供と同じように、恐怖を感じることもあります。当院長は日本獣医小動物行動学会の一員として、以前から動物病院におけるストレス軽減策を深く追求してきました。
その有効な対策の一つが、手術前に行う「PVP(Pre-Visit Pharmaceuticals)=来院前投薬」です。ご来院の90~120分前にご自宅でリラックス剤を飲ませていただくことで、通院時の興奮を抑え、精神的な負担(PTSD)の発生頻度を低減します。
当院は「ただ手術を行う」のではなく、「すべてのペットの生涯を見据えた手術」であるべきだと考えます。動物たちが病院を少しでも好きになれるよう、これからも最善のケアを追求してまいります。

徹底した疼痛管理で
痛みを限りなく0に

麻酔リスクを上げる要因の一つに「痛み」があります。
「動物は痛みに強い」そう切り捨ててきた動物病院の黒歴史は、近年否定されています。

動物も人同様に痛みを感じ、痛みは血圧(循環器)・血液pH・麻酔の効き目へ悪影響を与えることがわかっています。電気メスを使用しても、全身に電流がなれることで熱性疼痛が生じるため、決して無痛ではありません。

当院では安全性を確保するため、どの施術においても国際ガイドラインに準拠した麻酔疼痛管理計画書を作成します。また、他院では省かれがちな局所麻酔・領域麻酔も駆使して多角的な鎮痛処置(マルチモーダル鎮痛)を実施しています。重度な痛みを伴うことが予想される場合、痛みに敏感な患者様については麻薬性鎮痛剤を使用した施術もご提案可能です。

無麻酔歯石除去処置について

愛犬や愛猫のお口のニオイや、茶色くついた歯石。気になってはいるけれど、病院で相談すると「全身麻酔が必要です」と言われてしまい、足が遠のいてしまってはいませんか?

「うちの子はもうシニアだし、麻酔に耐えられるか心配」

「ただ歯をキレイにするだけなのに、もしものことがあったら…」

そのように考え、不安で胸がいっぱいになってしまうのは、飼い主様として当然のことです。誰だって、大切な家族を危険な目に合わせたくはありません。

そのため、最近では「無麻酔歯石除去」や「麻酔なしで歯石を取ります」と謳うサロンやサービスに魅力を感じる方も多くいらっしゃいます。麻酔を使わないなら、その方が体に優しく安全なように思えるかもしれません。

しかし、獣医師として、歯科治療のプロとして、私たちは歯周病に対する「無麻酔での歯石除去」を推奨いたしません。

決して飼い主様の「麻酔を避けたい」という愛情を否定するわけではありません。ただ、無麻酔での処置が、かえってペットに大きな苦痛と健康被害を与えるリスクが高いという真実を、どうしても知っていただきたいのです。

無麻酔歯石除去をおすすめしない4つの理由

「麻酔を使わない」ということは、一見メリットのように見えますが、実は医学的な観点からは多くの危険が潜んでいます。ここでは、なぜ私たちがリスクを冒してでも麻酔が必要だと判断するのか、その理由をご説明します。

1. 「見た目」しかキレイにならず、病気は治りません

表面的な歯石を取り除くだけならば、無麻酔での処置も検討しても良いでしょう。しかし、「臭いがする」「歯茎が赤い」という状態は、すでに歯周病になっており、病的な状態です。歯周病の本当の恐ろしさは、目に見える歯石(歯の表面の汚れ)ではなく、歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)に入り込んだ細菌にあります。

無麻酔では、表面の茶色い石を取って白くすることはできても、歯周ポケットの奥深くにある膿や汚染物質を取り除くこと(ルートプレーニングなどの専門処置)は不可能です。

これでは、「見た目はピカピカだけど、歯茎の中では病気が進行して顎の骨が溶け続けている」という、非常に怖い状態を見過ごすことになってしまいます。

2. 動物たちにとって、想像以上の「恐怖と痛み」です

周囲で「親知らずを抜くために全身麻酔をかけた」という話を聞いたことはありませんか?
親知らずは根が深く、とても抜きづらい、厄介なものです。大きな痛みも伴うため、歯肉への局所麻酔注射もしくはガーゼによる浸潤麻酔を必ず用います。

同じことが、麻酔をかけていない犬猫で可能だと思いますか?
普通に考えて、不可能です。
私たち人間は「治療のためにじっとしていよう」と理解できますが、動物たちにはそれが伝わりません。

鋭利な金属の器具を口の中に入れられ、ガリガリと削られる感覚は、恐怖以外の何物でもありません。嫌がって暴れる子を数人がかりで押さえつける行為は、ペットに多大なストレスを与え、「口を触られることへのトラウマ」を植え付けてしまいます。ときには施術者や保定者に噛みつくこともあるでしょう。口の中を触っているときに、どのような方法で噛まれるのを防げるでしょうか?大怪我を負うリスクもあります。

また、歯石を取る振動や刺激は、痛みや不快感を伴います。麻酔なしでこれを行うのは、動物福祉の観点からも推奨できるものではありません。

3. お口の中や眼を傷つける「大怪我」のリスクがあります

歯石を取る器具(スケーラー)は、刃物のように非常に鋭利です。

どんなにおとなしい子でも、痛みや恐怖でふいに顔を動かしてしまうことがあります。その瞬間、器具が歯茎に深く突き刺さったり、舌を切ったり、最悪の場合は眼を傷つけてしまったりする事故が起こる可能性があります。

これらは、動かないように麻酔をかけていれば防げる事故です。

4. 汚れた菌や水を肺に吸い込む「誤嚥(ごえん)」の危険があります

歯石には無数の細菌が含まれています。処置中にこれらが剥がれ落ちたり、洗浄用の水が喉の奥に流れたりした際、麻酔をかけて気管チューブ(空気の通り道を確保する管)を入れていないと、それらが肺に入り込んでしまいます。

これにより、重篤な「誤嚥性肺炎」を引き起こし、命に関わる事態になることも少なくありません。


知っておいていただきたい、無麻酔処置の事故と法律の話

大切な家族の命を守るために、少し怖いお話も包み隠さずお伝えしなければなりません。 「麻酔を使わない=安全」というイメージを持たれがちですが、実は過去に、無麻酔処置による痛ましい死亡事故が起きていることをご存知でしょうか。

また、誰がその処置を行うかによって、法律上の問題や、緊急時の対応に大きな違いが生まれます。

1. 資格と法律について:その人は「獣医師」ですか?

現在、「ドッグデンタルハイジニスト」や「犬の歯科衛生士」といった肩書きで無麻酔歯石除去を行っているケースが見受けられます。しかし、これらは民間の認定資格であり、国家資格(獣医師免許)ではありません。

人間の歯科衛生士は国家資格ですが、動物医療において同様の公的資格は存在しません。そのため、獣医師免許を持たない者(トリマー、動物看護スタッフ、民間の認定資格者など)が、費用を受け取って歯石除去(医療行為)を行うことは、獣医師法に違反する違法行為となります。

なぜ法で規制されているのか? それは、歯石除去が身体に侵襲(負担)を与える「医療行為」だからです。獣医師でない者は、万が一処置中に体調が急変した場合、蘇生措置や投薬といった救命対応が一切できません。 日本獣医学会やアメリカ獣医歯科学会も、こうした無資格者による処置に対し、強く警鐘を鳴らしています。

2. 実際に起きた死亡事故の事例

実際に報告されている事故の事例をご紹介します。これらは決して「運が悪かった」で済まされる話ではなく、医学的管理の不足が招いた結果です。

事例①:無麻酔処置中の窒息死(2018年・11歳チワワの事例)

「ドッグデンタルハイジニスト」を名乗る施術者により、無麻酔での歯石除去を受けていた11歳のチワワちゃんが、処置中に亡くなるという事故が発生しました。

  • 原因: 歯石を取るために仰向けの状態で強く押さえつけられた結果、呼吸ができなくなり、窒息状態に陥りました。
  • 対応の不備: 血液中の酸素が不足し、歯茎や舌の色が青紫色になる「チアノーゼ(危険なサイン)」が出ていたにもかかわらず、施術者には医学的知識がなかったため、そのサインが見過ごされました。結果、適切な救命措置も行われず、尊い命が失われてしまいました。

この事故は、「医学的知識のない者が、無理な体勢でストレスを与え続けたこと」が最大の要因です。

事例②:基礎疾患の見落としと悪化

心臓病(心不全)の持病があり、投薬治療中だったワンちゃんが、歯石除去後に亡くなった事例です。 処置後に心不全の兆候が見られたため、一時的に酸素吸入を行い回復したものの、帰宅途中に再度容態が悪化し、息を引き取りました。

  • 教訓: 高齢や持病のある子への処置は、常に命のリスクと隣り合わせです。獣医師であれば、事前の検査で心臓の状態を把握し、処置中も心電図モニターで監視し続けることができますが、医療機関以外ではその判断や対応が困難です。

3. 「まさか」に備えるのが医療です

もちろん、病院で行う麻酔下での処置であっても、リスクが完全にゼロというわけではありません。過去には、麻酔下で処置を行い、元気に目覚めたものの、翌日に原因不明で亡くなってしまったという稀な事例も報告されています。

しかし、だからこそ私たちは、「万が一」を想定した準備を徹底しています。 事前の血液検査、レントゲン、処置中のモニター監視、そして緊急時の救命設備。これらが揃っている環境でのみ、安全な歯科治療は可能になります。

「無麻酔なら手軽で安心」という言葉の裏には、「医学的な安全管理がなされていない」という大きなリスクが潜んでいることを、どうか知っておいてください。

未来を見据えた医療としての歯石除去処置

私たち獣医師が目指しているのは、単に「歯を白くすること」ではありません。

「痛みのない健康な口で、いつまでも美味しくご飯が食べられること」です。

もし、麻酔への不安が拭えない場合は、どうぞ遠慮なく診察室でおっしゃってください。「怖いから嫌だ」と伝えていただいて構いません。

今のその子の体調で麻酔が可能か、どのような安全対策をとっているか、納得いくまで丁寧にご説明させていただきます。

愛するご家族の健康のために、正しい選択を一緒に考えていきましょう。

参考情報(エビデンス):

veterinary dental procedure under anesthesia with monitoring equipmentの画像


全身麻酔について

全身麻酔が不安な方へ

1. はじめに:その「不安」は、愛情の証です

「当院の歯石除去手術には全身麻酔が必要です」

診察室でそう告げられたとき、動揺しない飼い主様はいらっしゃいません。「小さな体に負担がかかるのではないか」「もしそのまま目が覚めなかったらどうしよう…」と、悪い想像をしてしまうのは、言葉を話せない大切な家族を想うからこそです。

その不安なお気持ちは、決して大げさなものではありません。私たち獣医師も、自分のペットを手術するときは同じように緊張します。 だからこそ、今日は少しだけ勇気を出して、「なぜ麻酔が必要なのか」「どのように安全を守るのか」について、お話しさせてください。


2. なぜ、全身麻酔が必要なのでしょうか?

麻酔は単に「眠らせる」だけのものではありません。わんちゃん・ねこちゃんを「守る」ための、一番やさしい手段でもあります。

大きく分けて、2つの大切な役割があります。

  • 痛みと恐怖から守るため 私たち人間でも、手術の痛みや手術室の雰囲気は怖いものです。動物たちは「今から手術をするよ」と言葉で説明しても理解できません。意識がある状態で体にメスを入れることは、耐えがたい痛みと恐怖を与えてしまいます。 全身麻酔は、「寝ている間に、痛みも怖さもなくすべてが終わっていた」という状態を作ってあげるための、思いやりの処置なのです。
  • 安全に、素早く手術を終えるため 繊細な手術中に、もし痛みで動いてしまったらどうなるでしょうか? 手術がうまくいかないだけでなく、思わぬ怪我や出血につながる危険があります。 また、動いてしまうと手術時間が長引き、かえって体力を奪ってしまいます。「じっとしてもらうこと」は、最短時間で安全に手術を成功させるために不可欠なのです。

3. リスクと、私たちが約束する安全管理

ここで、包み隠さず正直にお伝えしなければならないことがあります。 それは、「100%安全な麻酔は、世界中のどこにも存在しない」ということです。

お薬を使って意識を消す処置ですので、心臓や血圧に変化が出たり、お薬を分解する肝臓や腎臓に一時的な負担がかかったりすることは事実です。また、非常に稀ですが、体質に合わないアレルギー反応が出る可能性もゼロではありません。

だからこそ、私たちは「限りなく100%」に近づけるために、以下の準備を徹底しています。

  1. 徹底した事前の健康チェック 手術の前に必ず血液検査やレントゲン検査などを行い、「麻酔のお薬を使っても大丈夫な体調か?」「隠れた病気はないか?」を詳しく調べます。もし不安要素が見つかれば、無理に手術はせず、別の方法を考えます。
  2. 手術中のモニタリング(監視) 手術中は、獣医師だけでなく、麻酔の状態を監視する専任のスタッフがつきます。心電図や呼吸モニターを使い、「心臓はしっかり動いているか」「呼吸は安定しているか」を一瞬たりとも目を離さずチェックし続けます。

少しでも変化があればすぐに対応できる体制を整えています。これが、プロフェッショナルとしての私たちの責任です。


4. さいごに

全身麻酔は「怖いもの」であると同時に、病気を治し、元気な姿を取り戻すための「架け橋」でもあります。

手術当日、皆様の大切なご家族をお預かりするとき、私たちは「自分の家族を手術する」のと同じ覚悟で臨みます。 「元気になって、またお家でおいしいご飯を食べようね」と声をかけながら、麻酔から覚めるその瞬間まで、片時もそばを離れず見守ることをお約束します。

もし、まだ心のどこかに引っかかるものがあれば、どんな些細なことでも構いません。遠慮なく私たちに質問してください。 飼い主様の「納得」と「安心」が、手術の成功への第一歩です。

費用

▼歯石除去手術費用はこちら

体重歯石除去歯石除去+口腔内外科(抜歯・抜髄など)
15kg以上¥66,000¥77,000~
10~15kg¥55,000¥66,000~
5~10kg¥44,000¥55,000~
5kg未満¥33,000¥44,000~

よくあるご質問

手術の前に受診が必要ですか?

状態の確認(患部の確認)や術前検査、麻酔リスクの説明などのため必ず事前にご通院ください。その際、アプリなどから通常の診療でご予約ください。

手術の予約はウェブからできますか?

手術のご予約はお電話でのみ承っております。下記電話番号までおかけください。

初めて診察に伺う際、何か持って行った方がいいですか?

以前他院にかかられていた場合は、お薬や診断結果などがわかるものをご持参いただけるとスムーズに診察ができます。

全身麻酔が怖いのですが、歯周病のまま手術をしないとどうなりますか?

歯周病を放置することで顎骨折、敗血症、栄養失調などがおき、命に関わることもあります。また、慢性腸症、腎臓病、アルツハイマーなど、様々な病気の原因となりうることが人でもペットでも立証されています。「歯周病がひどいけれど、腎臓病になったから抗生剤も使いづらい」ということがよくあります。そのため、全身状態が許容できるうちに施術することをおすすめしています。

当院ではアメリカ麻酔科学会が制定した術前麻酔リスク評価を用いて麻酔リスクを評価し、具体的な麻酔リスクをパーセンテージでご提示いたします。100%安全な麻酔は存在しませんので、その数値を見て不安に思われる場合には手術をせず、抗菌薬の投与やデンタルケアを徹底して行い、定期的な健康チェック(年1~2回)を受けることで全身状態の定期チェックに努めることをおすすめいたします。

PVPというおくすりは必ず飲ませなければなりませんか?

PVPは手術の日の朝、来院前90~120分前に飲んでいただきます。なるべく薬のみの投与を推奨していますが、少量のおやつは許容しております。飲ませるのが大変だったり、大きなストレスになる場合には無理に飲ませずにご来院ください。

支払い方法は何がありますか?

当院では各種クレジットカード・電子マネーをご利用いただけます。

保険は使えますか?

一般的に、歯肉炎を伴っているなど、獣医師が治療の一環と判断した場合には保険適応となります。しかし、一部保険会社では保険適応外となることがありますので、各社保険窓口へお問い合わせください。美容目的の歯石除去手術は保険適応外となります。

入院が必要ですか?

原則日帰りとなります。手術時間が長かったり、術後の状態が安定しない場合には延泊となる可能性があります。

手術を受ける前に混合ワクチン・狂犬病ワクチン接種が必要ですか?

当院では院内感染を防ぐ目的で、皆様に混合ワクチンおよび狂犬病ワクチン、ノミ・マダニ駆虫処置をお願いしております。自宅にて予防しているにも関わらず院内にて寄生虫感染が確認された場合には追加で駆虫処置を施こさせていただきます。

高齢でも手術をしてもらえますか?

「高齢だから麻酔をかけれない」というのは誤った考えです。事実、単純に高齢(犬:平均寿命以上、猫:15歳以上)というだけでは麻酔リスクはそれほど上昇しません。年齢よりも心臓病などの持病の状態のほうが麻酔リスクへ直結します。そのため、詳しい全身状態の把握が大切になります。電話やチャットのみでその子の麻酔リスクを評価することは不可能です。必ず事前に診察へお越しください。

入院中の面会は可能ですか?

延泊となる場合、基本的に面会は可能ですが、スタッフまでお問い合わせください。
なお、面会は診療時間内となっております。

いつも呼吸がガァーガァー言って苦しそうにしていますが、手術してもらえますか?

ガチョウ様呼吸(ガァガァ)やいびき(ズーズー)といった症状を呈している場合、麻酔リスクが上昇します。御理解の上お申し込みください。特に重度の短頭種気道症候群と判断される場合、術後に急変する可能性が顕著に高くなります。一般的には短頭種気道症候群の治療(内科・外科)が優先的になりますので、手術の受け入れをお断りすることがあります。