フィラリア予防について

- 1. どのような病気か
- 2. 犬だけの病気ではありません
- 3. 検査と予防
- 3.1.1. 1. 法的な側面:要指示医薬品と診察義務
- 3.1.2. 2. 獣医療ガイドライン上の推奨事項
- 4. 治療
- 5. 投薬期間とHDUについて
- 6. フィラリア予防薬について
- 6.1.1.1.1. ▼犬用
- 6.1. ・クレデリオプラス
- 6.2. ・パナメクチン錠S
- 6.3. ・アドボケート
- 6.4. ・ネクスガードスペクトラ
- 6.5. ・プロハート
- 6.5.1.1.1. ▼猫用
- 6.6. ・レボリューションプラス
- 6.7. ・ブラベクトプラス
- 6.8. ・アドボケート
- 6.9. ・ネクスガードキャットコンボ
- 7. 検査費用
- 8. おくすりの費用
- 9. よくある質問(FAQ)
どのような病気か
感染すると、そうめん状の寄生虫が心臓や肺動脈に寄生します。初期は無症状ですが、進行すると咳や呼吸困難、腹水などが現れます。重症化して「大静脈症候群」などを引き起こすと、致死率は極めて高くなります。
通常は免疫力の低下した高齢犬での発症が多いのはもちろんのこと、比較的若齢での発症も確認されています。個人的な経験にはなりますが、2歳の大型犬で発症をし、治療の甲斐なく亡くなってしまったケースもあります。
犬だけの病気ではありません
- 猫への感染: 猫も感染します。診断が難しく、咳や嘔吐、あるいは「突然死」の原因になることもあります。
- 人獣共通感染症: 極めて稀ですが、人にも感染し、肺に肉芽腫を作ることがあります。
検査と予防
フィラリアの駆虫薬は法律により「要指示医薬品」に指定され、獣医師の指示がないと処方できません。また、すでに感染している個体に駆虫薬を投与することでショック反応(ミクロフィラリア反応)により命に関わることがありますので、一部の例外(猫・子犬など)を除き処方前のフィラリア感染検査の実施が必要となります。
2025年1月「いぬのきもち」Webユーザー調査(回答数=939)によると、フィラリア症予防は97.5%もの飼い主が対策を行っているという実態があきらかになりました。「していない」「以前はしていたが今はしていない」という回答はわずか2.4%であり、ごく少数派です。
フィラリア感染確認検査なしで予防薬を処方するリスクについて
1. 法的な側面:要指示医薬品と診察義務
フィラリア予防薬は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(旧薬事法)」において「要指示医薬品」に指定されており、「獣医師等の処方箋・指示により使用すること。」と定められています。「要指示医薬品」は、「獣医師が専門的な知識と技術をもって使用しなければ危険」な医薬品であり、獣医師による診察と処方または指示が必要です。 要指示医薬品の投与や処方に当たっては、獣医師自らが診察することが獣医師法第18条で義務づけられています。ここでいう「診察」とは、獣医学的見地から見て疾病に対して一応の診断を下しうる程度の行為を指します。
フィラリア予防薬を処方・投与する前には、事前に抗原検査及びミクロフィラリア検査を実施する必要があります。この検査は、不顕性感染の診断の遅れを防ぎ、また、既に感染していた場合に意図せぬ「slow-kill」(緩徐な駆虫)を開始してしまうことで犬の安全性に関するリスクを高めることを避けるために重要です。
しかし、以下のような例外的な状況が、獣医師法上の「診察」の範囲として認められる場合があります。
1. 子犬への初回投与: 蚊が出ていない時期に生まれた子犬が、初めての予防シーズンで薬を使用する場合、成虫が寄生するまでに必要な期間(約6ヶ月)が経過していないため、体内に成虫や大量の幼虫がいないと判断されます。このような場合は、フィラリア検査をせずに予防薬の投与が可能ですが、必ず獣医師の診察を受け、指示のもとに投薬を開始する必要があります。
2.猫への投与:猫は適正宿主ではないため、フィラリアは簡単には増殖できません。そのためフィラリア検査を行ったとしても十分な反応が認められないことが多いとされています。そのため、ショック反応のリスクは0ではありませんが、おくすりによる副作用も問題にならないと考えられます。ただし、逆を言えば陽性反応が出る可能性もありますので、獣医師の診断上フィラリア感染が疑わしい場合、検査を行うことが推奨されます。
3. 定期的な健康把握: 産業動物(牛、馬など)の診療に関する通達では、獣医師が自ら相当期間、定期的に当該農場の飼育動物の健康状態を把握している場合、飼育者からの病状の聴取をもって指示を与えることは、「一応法令違反とはならないものと解される」とされています。ただし、これは犬猫診療におけるフィラリア予防薬の検査なしの処方について直接言及したものではありません。
2. 獣医療ガイドライン上の推奨事項
米国犬糸状虫学会(AHS)のガイドラインでは、検査なしでの予防薬の処方は強く推奨されていません。7ヶ月齢以上の犬や、過去12ヶ月以内に検査を行った記録がない犬に予防薬の投与を行う場合には、予防薬を調剤または処方する前に事前に抗原検査及びミクロフィラリア検査を実施する必要があるとされています。
検査が強く推奨される理由は次のとおりです。
• ショック反応のリスク回避: 既に成虫が寄生している犬(陽性犬)に予防薬を使用すると、体内にいるミクロフィラリア(幼虫)が急激に死滅し、ショック反応(ミクロフィラリア反応)を起こし、命にかかわる危険があるためです。
• 不適切な治療の回避: 適切な診断検査により犬の真のフィラリア状態を確かめずに予防薬の投与を行うと、運動制限やドキシサイクリンの投与を検討せずに最適ではない「Slow-kill」法を開始することになり、犬の安全性に関するリスクを高めることになります。
• 耐性株の増加リスク: 不適切な検査を行うことで犬の真の状態を知らずに予防薬を投与すると、薬剤に感受性を持つ幼虫だけが駆除され、薬剤に耐性を持つ幼虫が成長を続け、集団内で耐性のある犬糸状虫の数を増加させることにつながる可能性があります。
フィラリア検査は抗原検査とミクロフィラリア検査の併用が推奨されますが、片方の検査しか実施できない環境の場合、優先的には抗原検査が推奨されます。もし抗原検査を行えない場合には、少なくとも予防薬の投与開始前に1滴の血液でミクロフィラリア検査を行うべきであるとされています。検査を行わずに薬を投薬することは、それが獣医療・健康上のリスクを伴う可能性があることを十分に理解しておく必要があります。
治療
治療には「駆虫薬による治療」や「外科手術による摘出」がありますが、血管の閉塞やショック症状など、体に大きな負担とリスクを伴います。 そのため、「予防」こそが最大の治療です。毎月1回の予防薬投与で、ほぼ100%防ぐことができます。
投薬期間とHDUについて
予防薬は、蚊が出始めた1ヶ月後から、蚊がいなくなった1ヶ月後まで飲み続ける必要があります。 当院では、地域の気温から蚊の体内でのフィラリア幼虫の成長を予測するHDU(Heartworm Development Unit)という科学的指標に基づき、関東地方で推奨されている5月から12月までの投薬をご案内しています。ただし、飼育環境によっては冬季も蚊が確認される場合があります。また、フィラリア以外の寄生虫(ノミ・マダニ・お腹の中の虫)などを予防するためには他の期間も予防する必要があります。特に、マダニは一年中活動する虫ということは意外と知られていません。
獣医師と相談し、飼育環境に合わせて予防期間を調整しましょう。

フィラリア予防薬について
当院では下記の薬剤を取り扱っております。
一部薬剤は取り寄せとなります。
▼犬用
・クレデリオプラス
月に一回のフレーバー錠タイプ
(予防対象:フィラリア+ノミ+マダニ+その他)

・パナメクチン錠S
月に一回の錠剤タイプ
(予防対象:フィラリア)

・アドボケート
月に一回のスポットタイプ
(予防対象:フィラリア+ノミ+その他)
※まとめ買い取り寄せ

・ネクスガードスペクトラ
月に一回のフレーバー錠タイプ
(予防対象:フィラリア+ノミ+マダニ+その他)
※まとめ買い取り寄せ

・プロハート
1年に1回の注射タイプ
(予防対象:フィラリア)

▼猫用
・レボリューションプラス
月に一回のスポットタイプ
(予防対象:フィラリア+ノミ+マダニ+その他)

・ブラベクトプラス
3ヶ月に一回のスポットタイプ
(予防対象:フィラリア+ノミ+マダニ+その他)
※まとめ買い取り寄せ

・アドボケート
月に一回のスポットタイプ
(予防対象:フィラリア+ノミ+その他)
※まとめ買い取り寄せ

・ネクスガードキャットコンボ
月に一回のスポットタイプ
(予防対象:フィラリア+ノミ+マダニ+その他)
※まとめ買い取り寄せ

検査費用
当院ではフィラリア薬を処方する際には原則としてフィラリア検査を実施いたします。
検査法は国際的に広く汎用されている「米国犬糸状虫学会ガイドライン(2024年改定)」に準拠しています。
また、通年予防を実施している際でも、薬の効果が100%である保証はないため、フィラリア検査を行うことを推奨しています。検査を希望されない場合には、そのリスクについて十分理解の上ご受診ください。
▼フィラリア検査
| 検査名 | 費用(税込:円) | 備考 |
| フィラリア検査セット (ミクロフィラリア直接検査+成虫抗原検査) | 1,980 | 通常はこちらの検査のみ実施します。 心臓病があり、原因としてフィラリア症が疑われる際、動物保険が適応可能です。検査結果が出るのに数分かかります。 |
| ミクロフィラリア集虫検査 (Knott変法) | 1,650 | フィラリア症が疑われ、ミクロフィラリア直接検査法の結果の信憑性が疑われる際に追加で実施されます。動物保険が適応可能です。 本検査は結果が出るのに15分ほどかかります。 |
おくすりの費用
当院では4月よりフィラリア予防薬のまとめ買いキャンペーンを実施予定です。
予防推奨期間8ヶ月分(5〜12月)をまとめて購入していただくと、15%お値引きさせていただきます。また、9ヶ月分で20%、「早めに予防をしたい」、「通年で予防したい」という場合には最大で25%お値引きをさせていただきます。
各製剤の費用は下記の表をご確認ください。
表記は値引き後の価格です。(税込:円)
▼クレデリオプラス(犬)
| 規格 | 体重(kg) | 1ヶ月分 | 8ヶ月分(-15%) | 9ヶ月分(-20%) | 12ヶ月分(-25%) |
| S | 1.7〜2.8以下 | 2,420 | 16,460 | 17,430 | 21,780 |
| M | 2.8〜5・5以下 | 2,640 | 17,960 | 19,010 | 23,760 |
| L | 5.5〜11以下 | 2,750 | 18,700 | 19,800 | 24,750 |
| LL | 11〜22以下 | 2,970 | 20,200 | 21,390 | 26,730 |
| XL | 22〜45以下 | 3,410 | 23,190 | 24,560 | 30,690 |
| XL + M | 45〜50.5以下 | 4,400 | 29,920 | 31,680 | 39,600 |
| XL + L | 50.5〜56 | 4,950 | 33,660 | 35,640 | 44,550 |
▼パナメクチン錠S(犬)
| 規格 | 体重(kg) | 1ヶ月分 | 8ヶ月分(-15%) | 9ヶ月分(-20%) | 12ヶ月分(-25%) |
| S34 | 〜5.6 | 880 | 5,990 | 6,340 | 7,920 |
| S68 | 5.7〜11.3 | 990 | 6,740 | 7,130 | 8,910 |
| S136 | 11.4〜22.6 | 1,320 | 8,980 | 9,510 | 11,880 |
| S272 | 22.7〜45.3 | 1,650 | 11,220 | 11,880 | 14,850 |
| S272 + S68 | 45.4〜56.6 | 1,870 | 12,720 | 13,470 | 16,830 |
| S272 + S136 | 56.7〜67.9 | 2,090 | 14,220 | 15,050 | 18,810 |
▼アドボケート(犬・猫)
| 規格 | 体重(kg) | 1ヶ月分 | 8ヶ月分(-15%) | 9ヶ月分(-20%) | 12ヶ月分(-25%) |
| 猫用0.4ml | 1〜4 | 1,980 | 13,470 | 14,260 | 17,820 |
| 猫用0.8ml | 4〜8 | 2,200 | 14,960 | 15,840 | 19,800 |
| 犬用0.4ml | 1〜4 | 1,980 | 13,470 | 14,260 | 17,820 |
| 犬用1ml | 4〜10 | 2,200 | 14,960 | 15,840 | 19,800 |
| 犬用2.5ml | 10〜25 | 2,420 | 16,460 | 17,430 | 21,780 |
| 犬用4ml | 25〜40 | 2,640 | 17,960 | 19,010 | 23,760 |
| 犬用4ml + 1ml | 40〜50 | 3,960 | 26,930 | 28,520 | 35,640 |
▼レボリューションプラス(猫)
| 規格 | 体重(kg) | 1ヶ月分 | 8ヶ月分(-15%) | 9ヶ月分(-20%) | 12ヶ月分(-25%) |
| 0.25ml | 〜2.5 | 1,540 | 10,480 | 11,090 | 13,860 |
| 0.5ml | 2.5〜5 | 1,650 | 11,220 | 11,880 | 14,850 |
| 1.0ml | 5〜10 | 1,760 | 11,970 | 12,680 | 15,840 |
▼ブラベクトプラス(猫)※全規格同料金
| 規格 | 体重(kg) | 3ヶ月分 | 6ヶ月分(-15%) | 9ヶ月分(-20%) | 12ヶ月分(-25%) |
| 112.5mg | 1.2〜2.8 | 4,950 | 8,420 | 11,880 | 14,850 |
| 250mg | 2.8〜6.25 | 4,950 | 8,420 | 11,880 | 14,850 |
| 500mg | 6.25〜12.5 | 4,950 | 8,420 | 11,880 | 14,850 |
▼ネクスガードキャットコンボ(猫)
| 規格 | 体重(kg) | 1ヶ月分 | 8ヶ月分(-15%) | 9ヶ月分(-20%) | 12ヶ月分(-25%) |
| S | 0.8〜2.5 | 1,760 | 11,970 | 12,680 | 15,840 |
| L | 2.5〜7.5 | 1,980 | 13,470 | 14,260 | 17,820 |
▼プロハート12(犬)
| 体重(kg) | 12ヶ月分 | 一ヶ月あたりの費用 |
| ~2.5未満 | 11,000 | 917 |
| 2.5~5未満 | 12,100 | 1,008 |
| 5~10未満 | 14,300 | 1,192 |
| 10~15未満 | 15,400 | 1,283 |
| 15~20未満 | 16,500 | 1,375 |
| 20~25未満 | 17,600 | 1,467 |
| 25~30未満 | 18,700 | 1,558 |
| 30~40未満 | 20,900 | 1,741 |
| 40~50未満 | 23,100 | 1,925 |
| 50〜60未満 | 25,300 | 2,108 |
よくある質問(FAQ)
フィラリア症はどのように感染するのですか?
犬糸状虫の感染は、蚊が媒介することで成立します。ミクロフィラリア血症の宿主(犬や野生のイヌ科動物など)から蚊が血液を吸血する際にミクロフィラリア(幼虫)を摂取し、蚊の体内で感染能のある第3期幼虫(L3)に発育します。その後、このL3を保有した蚊が別の犬を吸血する際にL3が伝播されます。
フィラリア予防はなぜ毎年行う必要があるのですか?
犬糸状虫の予防薬は、犬の体内に侵入した幼虫を駆虫し、成虫に発育するのを阻止する薬剤です。感染源となる動物、媒介蚊、そして幼虫の発育に適した環境条件(温度、湿度)があれば、犬種、年齢、性別に関わらず、すべての犬が感染する危険性があるため、予防薬の投与が最も重要です。
フィラリア予防薬は通年投与が推奨されていますか?
原則としてHDUという指標を目安とし、必要最低限の予防を推奨しています。一方で、予防薬の投与をたった一度でも忘れたり、遅らせたりするだけで感染してしまう危険性があるため、通年投与により投与忘れを防ぐことも重視されつつあります。
例えば、米国犬糸状虫症学会(AHS)は、犬糸状虫感染症の予防及びコンプライアンス(投薬の遵守)強化のために、FDA(米国食品医薬品局)に承認されている予防薬を通年投与で処方することを推奨しています。都市部では、建物などが熱を溜め込む「ヒートアイランド」現象により、寒い時期でも伝播可能な時季が長くなる微小環境を作り出すため、リスクがゼロになることは決してありません。これは日本でも同じで、特にマンションなどで全館空調の効いた環境では一年中蚊が認められることがあります。ご自身の飼育環境に合わせ、予防期間を獣医師と相談し決めていきましょう。
フィラリア予防薬の主な成分は何ですか?
犬糸状虫予防薬(イベルメクチン、ミルベマイシン・オキシム、モキシデクチン、セラメクチンなど)は、大環状ラクトン(ML)系の薬剤です。
自宅で蚊を見たことがないし、お散歩にもいきません。フィラリア予防をする必要はありますか?
都市部では建物や駐車場が日中に熱を溜め込む「ヒートアイランド」現象が発生します。コロナ以降の物流の増加により、荷物に紛れて寄生虫が侵入するリスクも否定できません。これにより、寒冷期でも媒介蚊の体内で犬糸状虫の幼虫が発育しやすく、伝播可能な時季が長くなる「微小環境」が存在するため、伝播のリスクがゼロになることは決してありません。
• 都市居住性の蚊の存在: ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)のような都市居住性の蚊は日本では青森県以南で全国的に広く生息しています。この蚊は植木鉢などの小さな容器内でも繁殖することができ、産卵のために吸血源を求め、かなり遠くまで飛ぶことができるため(3~8km/日)、お住まいのマンションの部屋まで侵入する可能性は否定できません。
(Bolling et al., 2007 ; Farajollahi et al., 2005 ; Hanson & Craig,1995 ; Hawley et al., 1989 ; Hudson, 1978 ; Romi et al., 2006)
フィラリア予防薬を始める前に検査が必要なのはなぜですか?
フィラリア陽性時に予防薬を使用すると、体内のフィラリアが一気に死滅し、ショック反応などで犬の身体に負担がかかる(ミクロフィラリア反応)危険性があるためです。既に成虫が寄生していないか、休薬期間明けや初めての投与前には必ず検査による確認が推奨されます。
子犬はフィラリアの検査をいつから受けるべきですか?
7ヶ月齢以上のすべての犬に対して、年1回の抗原検査とミクロフィラリア検査の両方を行うことを推奨しています。感染性幼虫(L3)が犬の体内に入り、成虫の抗原やミクロフィラリアが検出されるまでには、最短でも約5〜6ヶ月の期間が必要です。予防期間は5月から12月が推奨されていますので、その一ヶ月前、つまり4月からの検査が有用です。
例えば、前年の11月1日以降に生まれた犬が当年5月1日には6ヶ月齢であり、7ヶ月齢には満たないため、検査をせずにフィラリア予防薬の処方が可能です。ただし、投薬開始時期が遅れて6月にずれ込んだ場合、すでにフィラリアに感染している可能性があるため、検査必要となります。
フィラリアの診断で推奨されている検査は何ですか?
抗原検査は、無症状の犬のスクリーニングや感染が疑われる症例の検証において最も感度のよい診断法とされています。ただし、AHSは、ミクロフィラリア検査も同時に行うことを推奨しています。抗原検査とミクロフィラリア検査を組み合わせることで、抗原検査で偽陰性となる感染犬を見逃す可能性を減らせます。
抗原検査で陰性(NAD)と出た場合、本当に感染していないと言い切れますか?
検査キットによる抗原検査で陰性(NAD: No Antigen Detected)だったからといって、犬糸状虫に感染していないという確証にはなりません。偽陰性結果は、少数寄生、未成熟雌虫の寄生、雄虫の単性寄生の場合や、抗原抗体複合体による抗原の阻害が生じている場合などがあります。偽陰性が疑われる場合、Knott変法による詳しい血液検査や、超音波検査により肺動脈の虫体の存在確認が望まれます。
ノット変法とはどのような検査方法ですか?
ノット変法は、ミクロフィラリアの存在をより正確に判定するために望ましいとされる集虫法です。血液をホルマリン液で処理して赤血球を溶解し、遠心分離によってミクロフィラリアを集めて染色し、顕微鏡で観察します。この方法により、ミクロフィラリア数が少ない場合でも検出感度が高くなり、また、犬糸状虫と非病原性の他の糸状虫種を鑑別することができます。
フィラリア予防薬にはどのような剤型がありますか?
主に以下の4種類があります。
• 錠剤(素錠タイプ、フレーバー錠タイプに分かれます)
• チュアブル錠(おやつ状の製品)
• 滴下薬(スポットタイプ)(首の後ろに塗布する液体)
• 注射(動物病院で皮下注射し、6ヶ月または12ヶ月の持続的な予防効果が得られるもの. 当院では12ヶ月持続するタイプを使用しています)
チュアブル錠のメリット/デメリットは何ですか?
メリットは、おやつ状で嗜好性が高く、投薬が容易であることです。デメリットとしては、食物アレルギーがある犬では注意が必要な点が挙げられます。
滴下薬(スポットタイプ)のメリット/デメリットは何ですか?
錠剤やおやつを受け付けない犬や食物アレルギーがある犬でも安心して使用でき、吐き出すことがないので確実に投薬できる点が大きなメリットです。デメリットは、滴下することで犬猫が気にしてしまう点、舐めると苦みによって気持ち悪くなる点、滴下した部分を飼い主が触れなくなる・撫でられなくなる点、特徴的な臭いがする点などです。
コリー系の犬種はフィラリア予防薬で注意が必要ですか?
コリー系品種(コリー、ボーダー・コリーなど)の一部には、MDR1遺伝子変異を持つ犬がいます。この変異により、イベルメクチンやミルベマイシンといったML系薬剤に高い感受性を示すことが知られています。ただし、FDAで承認されている予防用量においては、これらの薬剤はP糖蛋白質欠損のある犬を含むあらゆる犬種に対して安全であることが明らかにされています。特異体質でごく少量の薬剤でも副作用が出てしまうリスクは否定できないため、副作用が出たことがある、副作用が心といった場合には他薬剤を使用するように獣医師にお伝え下さい。
妊娠中の犬にフィラリア予防薬を投与しても問題ありませんか?
多くのフィラリア予防薬は妊娠中・授乳中の犬にも使用が可能とされていますが、自己判断での予防中断はフィラリア症を起こす危険が高まるため高リスクです。妊娠の可能性に気づき次第、かかりつけ医に確認しましょう。
予防薬を投与後、すぐに吐き出してしまった場合どうすれば良いですか?
投与後3時間以内に嘔吐した場合、予防に必要な用量が不足する可能性があるため、処方を受けた獣医師に追加投与の必要があるか相談することが推奨されます。投与後3時間以上経過していれば、薬はほとんど吸収されていると推測されますが、体調によっては吐き出されることもあるため、不安な場合は動物病院へ相談してください。
予防薬の一般的な副作用にはどのようなものがありますか?
代表的な副作用には、食欲不振、嘔吐、よだれが増える、下痢、元気がなくなるといった消化器症状があります。滴下薬では塗布部位に赤みや脱毛などの皮膚刺激が出ることがあります。注射タイプでは打った部位にしこりができることがあります。
予防薬の投与を忘れたり遅れたりした場合、どうすれば良いですか?
予防薬の投与を忘れたり遅れたりした場合は、すぐに動物病院で抗原検査とミクロフィラリア検査を実施することが重要です。検査の結果に応じて、新しい投薬を開始または変更する前に、適切な手順(通常、遅延直後から投薬を開始し、6ヶ月後、1年後と検査を行う)を踏む必要があります。これにより、感染していた場合の見逃しや、意図しない「Slow-kill」を開始してしまうリスクを避けることができます。
フィラリアが成虫に成長するのに半年かかるのであれば、駆虫薬の投与は半年ごとでよいのではないですか?
フィラリア感染後、犬が顕性感染(循環血液中にミクロフィラリアがいる状態)となるのは感染後6ヶ月、通常は7〜9ヶ月後とされています。
しかしながら、フィラリアは感染後早ければ52日で未成熟虫(L5)になることもあります。未成熟虫は、予防薬の作用に対する感受性がさらに低くなります。駆虫薬は本来感染性幼虫(L3)や脱皮後のL4幼虫に作用しますので、30日間隔での投与が推奨されます。
予防薬を誤って過剰に与えてしまった場合、どうすれば良いですか?
コリー系の品種などでは、過剰投与により重篤な神経症状(運動失調、昏睡、けいれんなど)が起こり、命にかかわる可能性があるため、すぐに動物病院へ連れていくべきです。他の品種でも体調不良が起こる可能性があるため、気づいた時点でなるべく早く動物病院に連絡し相談しましょう。
予防薬をインターネット通販で購入することはできますか?
フィラリア予防薬は要指示医薬品であるため、獣医師の処方または指示に基づかないと購入、販売、譲渡できないと法律で規制されています。インターネット上で見られる個人輸入代行形式での購入は、輸入薬が国内流通薬と同じか、偽物ではないかの確認が難しく、投与後の体調不良についてもすべて購入者の自己責任となるため、安全で確実な使用のためには動物病院での診察と処方を受けることが推奨されます。
フィラリア症に感染が確認された場合、AHSが推奨する治療プロトコールはどのようなものですか?
AHSは、犬の臨床徴候の有無にかかわらず、ドキシサイクリンおよび大環状ラクトン(ML)を投与してから、メラルソミンを3回投与するプロトコールを推奨しています。これはメラルソミンを24時間間隔で2回注射投与する前に、単回注射投与を先行させる方法です。
ドキシサイクリンは、犬糸状虫の体内に共生しているボルバキアという細菌の数を減少させます。ボルバキアは犬糸状虫の生存や胚発生(ミクロフィラリアの生産)に必要であり、ボルバキアを駆除することで、死滅した犬糸状虫による病理発生(炎症)を減弱し、犬糸状虫の伝播を阻止する効果があります。治療期間中及びメラルソミン最終注射投与後の6から8週間にわたり、犬の活発な運動は、成虫殺滅後に起きる肺血栓塞栓症(PTE)などの合併症に関わる最も重要な因子のひとつです。運動によって血流や気流が上昇すると、死滅虫体が引き起こす血管炎や血栓塞栓症が悪化し、心肺系の合併症のリスクを高めるため、厳格な運動制限が必須です。
Slow-kill法(非ヒ素プロトコール)は推奨されていますか?
AHSは、slow-kill成虫殺滅剤としてMLs系フィラリア駆虫薬を単独使用するいかなる方法も推奨していません。これは、MLs単独での成虫殺滅には2年以上かかることが示されており、その間に感染は持続し、病態が悪化し続けること、また薬剤耐性を示す亜集団が発生する可能性があるためです。ただし、メラルソミンに対するアナフィラキシー反応を起こした犬など、メラルソミン治療が不可能な場合に限り、非ヒ素プロトコールが考慮されることがあります。
注射の予防薬「プロハート」が打てないのはどのようなときですか?
体重が大きく変動する時期(小型犬・中型犬では6ヶ月齢、大型犬では8ヶ月齢、超大型犬では10ヶ月齢未満)には投与が推奨されていません。
また、下記に該当する場合には投与を慎重に検討するか、打つことができません。
- フィラリア検査陽性の場合
- 発熱や下痢、嘔吐など体調不良がある
- 重篤な疾患にかかっていて獣医師が不可能と判断した場合
- 明らかな栄養障害・栄養不良がある
- 飼い主の制止によっても鎮静化が認められず、強度の興奮状態にあるもの。
- MDR1欠損症がある場合(適切な投与量であれば安全と言われています)
- 妊娠中または授乳中(適切な投与量であれば安全と言われています)
- てんかん発作の病歴がある(禁忌ではないが、駆虫薬の副作用としててんかん発作が起こり得るため、病態を鑑みて判断すること)


