避妊・去勢手術のメリット・デメリット

メリット・デメリットとは、つまり性ホルモンを完全に喪失させることによる長期的影響のことを指します。特に犬においては、生殖器系の病気を防ぐ一方で、代謝・免疫・整形外科に与えるデメリットが無視できないことが分かっています。

「必ずやらなければならない」という手術ではありません。下記のメリット・デメリットをよく理解したうえでご決断ください。

対象✓ メリット(利点)⚠ デメリット(リスク)
犬(雌)子宮蓄膿症・卵巣腫瘍の確実な予防
乳腺腫瘍リスクの軽減(初回または2回目発情前)
・偽妊娠の予防と行動改善
・プロゲステロン依存性糖尿病の改善
尿失禁(USMI):術後5〜20%で発症(特に大型犬・早期手術)
肥満:代謝低下による
関節疾患:1歳未満手術でリスク増加
特定のがん:血管肉腫・骨肉腫・リンパ腫など発症リスク増加
犬(雄)精巣腫瘍の予防
前立腺肥大(BPH)・前立腺炎の治療・予防
・会陰ヘルニア・肛門周囲腺腫の予防
・テストステロン依存の問題行動(マウンティング等)の改善
前立腺腫瘍:1%未満だが未去勢より発症リスク増
肥満:代謝低下による
関節疾患:早期手術でリスク増加
特定のがん:血管肉腫・骨肉腫・リンパ腫等のリスク増加
猫(雌)子宮蓄膿症・卵巣・子宮腫瘍の予防
乳腺腫瘍リスク大幅軽減(性成熟前手術で約90%減)
・発情期の不快な鳴き声・行動の完全な消失
肥満・糖尿病:代謝低下による
骨折:早期手術による骨端閉鎖遅延で大腿骨頭骨折リスク
・下部尿路疾患(LUTD)のリスク上昇
・特定のがん発生率の上昇可能性(調査中)
猫(雄)・精巣疾患の予防
尿スプレー行為・放浪・他猫への攻撃性の劇的な減少
・ケンカ減少による猫エイズ(FIV)等の感染症リスク低下
肥満・糖尿病:雌より雄で特に顕著
骨折:早期手術による大腿骨頭骨折リスク
・下部尿路疾患(LUTD)リスク上昇

不妊手術後の問題行動(マーキング・スプレー等)の残存率

性ホルモンはなくなっても、すでに学習した習慣や不安・ストレスに基づく行動は残る可能性があります。

動物種・性別対象となる行動術後の残存率(エビデンスデータ)
猫(雄)尿スプレー(マーキング)性成熟前手術でも約10%で残存または発生
猫(雌)尿スプレー(マーキング)性成熟前手術でも約5%で認められる
犬(雄)尿マーキング・徘徊・マウンティング60%以上で行動が50%以上改善。ただしほぼ消失(90%以上改善)に至るのは25〜40%に留まる。習慣化した行動は術後も持続しやすい
犬・猫共通恐怖・不安による攻撃性ホルモン非依存の恐怖ベースの攻撃性は不妊手術では改善しない。早期去勢によって不安感が増し、悪化するケースも報告あり

手術の適正期

以前は動物種・品種にかかわらず「6ヶ月齢」が推奨されていましたが、現在は動物種・品種・サイズによって時期をずらすことが推奨されています。特に大型犬では、1歳未満の早期性腺摘出が関節疾患やがんのリスクを有意に高めることが判明しています。

動物・サイズ分類具体的な品種例推奨される手術年齢
猫(雌・雄)全般生後3〜4ヶ月齢(性成熟前):整形外科的・行動的な悪影響は認められず、生殖器疾患や乳腺腫瘍の予防メリットが大きい
小型犬・トイ種チワワ、ポメラニアン、マルチーズ、トイプードル、ヨークシャーテリアなど時期指定なし(飼い主の選択):関節疾患やがんのリスク増加がほとんど見られないため、生後6ヶ月以降いつでも安全に実施可能。※ボストンテリア雄などは1歳以降が推奨
中型犬ビーグル、ボーダーコリー、コーギーなど品種・性別により異なる:コーギー雄は6ヶ月以降、ボーダーコリーは雌雄ともにがんリスク回避のため1歳以降を推奨
大型犬・超大型犬ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、ジャーマン・シェパードなど1歳または2歳を過ぎてから(または未不妊のまま):ジャーマン・シェパードは雌雄ともに2歳以降。ゴールデン雌はすべての手術時期でがんリスクが高まるため「未避妊」も有力な選択肢
雑種犬(小型)成犬時予想体重19kg以下時期指定なし(飼い主の選択)
雑種犬(中〜大型)成犬時予想体重20kg以上1歳または2歳を過ぎてから:1歳未満の手術で関節疾患リスクが最大3倍増加するため遅らせることを推奨

術式とメリット・デメリット

「ホルモンを完全に無くす」従来の手術だけでなく、健康被害を避けるために「ホルモンを残す」術式も選択肢として提示されるようになっています。

目的術式名✓ メリット⚠ デメリット・注意点
雌の
性腺摘出

(ホルモン喪失)
卵巣摘出術(OE)
卵巣のみを摘出
・切開創が小さく痛みが少ない
・手術時間が短く合併症リスクが低い
・子宮に病変がなければWSAVAが最も推奨する術式
・術式によっては卵巣遺残症候群(ORS)のリスクがある
卵巣子宮摘出術(OHE)
卵巣と子宮を摘出
・子宮腫瘍などの子宮疾患を完全に予防
・既に子宮病変がある場合や妊娠中の動物に必須
・OEに比べ切開が大きく痛みが強い
・出血・尿管結紮のリスクが相対的に高い
雌の
性腺温存

(ホルモン維持)
子宮摘出術
卵巣温存手術
・性ホルモン維持により大型犬の関節疾患・がん・尿失禁リスク増を防げる
・望まない妊娠と発情出血は防げる
・発情行動は継続し、雄犬を引き寄せる
・偽妊娠・乳腺腫瘍リスクは残るため定期検診が必須
・短頭種では腟脱リスクを高める可能性
雄の
性腺摘出

(ホルモン喪失)
精巣摘出術
一般的な去勢
・精巣疾患・前立腺肥大の確実な予防
・性ホルモン由来の問題行動を減らす
・陰嚢アプローチなら自傷が少なく手術が早い
・ホルモン喪失によるリスク(関節疾患・がん・肥満)増加(特に大型犬)
雄の
性腺温存

(ホルモン維持)
精管切除術
パイプ結紮
・テストステロン維持により大型犬の関節疾患・がんリスク増を防げる
・生殖能力のみを奪う
・精巣腫瘍・前立腺疾患リスクは残るため定期エコー検査が必要
・性行動(放浪・マーキング等)は改善されない
・術後21日(猫はさらに長期間)は妊娠リスクが残る
手術
アプローチ
腹腔鏡手術・痛みが極めて少なく回復が早い
・大型犬・肥満犬で腹腔内の視認性が非常に高く安全
・専用機器と高度な技術が必要で費用が高額
当院では専用機器がないため高次病院への紹介となります
縫合技術皮内縫合
埋没縫合
・表面に糸が出ず、舐めて引き抜くリスクを劇的に減らす
・エリザベスカラー・術後服のストレスを軽減
・WSAVAで推奨されている方法
・執拗に舐め続ける場合は皮膚炎・感染のリスクがあるため観察は必要

当院の施術の特徴

FEATURE 01
PVP(来院前投薬)によるストレス軽減
来院の90〜120分前にご自宅でリラックス剤を服用していただくことで、通院時の興奮を抑え、精神的な負担(PTSD)の発生頻度を低減します。院長は日本獣医動物行動学会の一員として、動物病院のストレス軽減策を長年追求してきました。
FEATURE 02
徹底した疼痛管理で痛みを限りなく0に
国際ガイドラインに準拠した麻酔疼痛管理計画書を作成。他院では省かれがちな局所麻酔・領域麻酔も駆使した多角的な鎮痛処置(マルチモーダル鎮痛)を実施しています。痛みに敏感な患者様には麻薬性鎮痛剤を使用した施術もご提案可能です。
FEATURE 03
声門上気道デバイスによる安全な呼吸管理
従来の気管チューブに比べ、声帯を保護しながら安全に呼吸をサポートできる新しいタイプの器具を使用。猫や短頭種でも体への負担が少なく、院長自身が安全性を確認したうえで導入しています。
FEATURE 04
WSAVAガイドライン準拠の最適術式提案
子宮に異常がない場合は痛みの少ない「卵巣のみの摘出(OE)」を推奨。大型犬には「精管切除術」という選択肢もご相談可能。抜糸不要の「皮内縫合」など、エビデンスに基づく安全で動物に優しい手術を実践しています。
他院では追加料金が生じる処置(術中の昇圧剤投与・手術前後の酸素吸入・術後の追加鎮痛処置など)についても、当院では追加費用をいただきません(ベーシックプランでは一部追加料金が生じます)。

プラン

◯ = 含まれます × = 含まれません

項目ベーシックスタンダードプレミアム
PVP処方
簡易血液検査××
精密血液検査×
血液学的心臓病検査××
精密心電図検査××
胸部レントゲン検査××
血圧測定××
静脈内留置針
栄養点滴
全身麻酔
入院費
乳歯抜歯術(無制限)×
周術期昇圧剤投与
周術期鎮痛剤追加投与×
局所麻酔
吸収性縫合糸
皮内縫合
術式選択
痛み止め注射
強オピオイド鎮痛(レミフェンタニル)××○(犬)
止血剤2種注射
抗生剤注射
経口鎮痛剤処方
術中昇圧剤投与(ドパミン・アトロピンなど)
術前制吐剤投与(犬:短頭種)×
手術前後酸素吸入管理×
お手入れセット×
術後服・ネッカー貸し出し×

費用

すべて税込価格です。

🐾 男の子の手術料金
動物種体重ベーシックスタンダードプレミアム
40kg以上¥38,500¥41,800¥47,300
30〜40kg¥35,200¥38,500¥44,000
20〜30kg¥31,900¥35,200¥40,700
10〜20kg¥29,700¥33,000¥38,500
5〜10kg¥27,500¥30,800¥36,300
3〜5kg¥26,400¥29,700¥35,200
3kg未満¥25,300¥28,600¥34,100
5kg以上¥22,000¥27,500¥33,000
3〜5kg¥19,800¥25,300¥30,800
3kg未満¥16,500¥19,800¥25,300
🌸 女の子の手術料金
動物種体重ベーシックスタンダードプレミアム
40kg以上¥51,700¥55,000¥60,500
30〜40kg¥48,400¥51,700¥57,200
20〜30kg¥44,000¥47,300¥52,800
10〜20kg¥40,700¥44,000¥49,500
5〜10kg¥37,400¥40,700¥46,200
3〜5kg¥36,300¥39,600¥45,100
3kg未満¥35,200¥38,500¥44,000
5kg以上¥33,000¥36,300¥41,800
3〜5kg¥27,500¥30,800¥36,300
3kg未満¥22,000¥25,300¥30,800

各種オプション料金

項目説明費用(税込)
胸部レントゲン検査(2枚)高精度デジタルレントゲンで胸部を確認¥3,300
腹部レントゲン検査(2枚)高精度デジタルレントゲンで腹部を確認¥3,300
整形レントゲン検査(6枚)股関節・膝関節をあらゆる角度で撮影¥6,600
呼吸器レントゲン検査(動画)咽頭部の状態をレントゲン動画撮影機器で確認¥3,300
腹部超音波検査超音波で腹部臓器の状態を確認¥3,300
循環器超音波検査超音波で心臓の状態を確認¥3,300
精密血液検査59項目測定で詳しく内臓を検査¥6,600
精密心電図検査心臓の異常や自律神経系バランスを確認¥1,650
血圧測定手術前(平常時)の血圧測定¥3,300
抗体検査混合ワクチンの効果が得られているか確認¥8,800
持続性抗生剤注射2週間効果持続する抗生剤¥2,200〜
強オピオイド鎮痛薬(レミフェンタニル)強オピオイド鎮痛で痛みを0に近づける¥4,400〜
マイクロチップ挿入環境省準拠の世界最小マイクロチップを挿入¥4,400
お手入れ(セット)爪切り・肛門腺・足裏バリカン・耳掃除¥1,650
お手入れ(単品)お手入れのうちどれか一つ¥1,100
乳歯抜歯(1本)乳歯遺残によるトラブルを予防¥1,100
エリザベスウェア ※猫の去勢以外手術患部を保護する術後服¥3,300〜
ネッカーレンタル料 ※猫の去勢以外傷口を気にする場合にお貸しします¥110/日

陰睾など追加料金

項目説明費用(税込)
再診料¥880
皮下陰睾鼠径部に停滞している睾丸を取り出します¥3,300
腹腔内陰睾腹腔内にある精巣を摘出します避妊手術料金になります
ノミ・マダニ駆虫処置予防されていない・寄生が確認された際に実施¥1,540〜

よくある質問

状態の確認(精巣や腹壁ヘルニアの有無など)や手術のプラン説明、術後服のサイズチェックなどのため、必ず事前にご通院ください。通常の診療でアプリなどからご予約いただけます。
手術のご予約はお電話のみで承っております。042-396-1122 までお電話ください。
当院ではアメリカ麻酔科学会が制定した術前麻酔リスク評価を用いて、具体的な麻酔リスクをパーセンテージでご提示いたします。100%安全な麻酔は存在しないため、不安な場合には手術をせず定期的な健康チェック(年1〜2回)で病気の早期発見に努めることもおすすめしています。
手術当日の朝、来院90〜120分前に飲んでいただきます。なるべく薬のみの投与を推奨していますが、少量のおやつは許容しています。飲ませるのが大変だったり、大きなストレスになる場合には無理に飲ませずにご来院ください
当院は現時点でTNR事業に参加していないため、補助金は使用できません。周辺自治体の補助金は原則として「保護猫団体」を介したものに限定されています。詳細は各自治体HPをご確認ください。
▶ 東村山市「地域猫活動支援事業」
▶ 所沢市「猫に関するご案内」
▶ 公益財団法人どうぶつ基金
各種クレジットカード・電子マネーをご利用いただけます。
一般的に避妊手術および臍ヘルニアなどの先天性疾患は保険適応外となります。詳しくは各社保険窓口へお問い合わせください。
男の子は原則日帰り、女の子は原則一泊入院となります。腹腔内陰睾で開腹手術になった場合や術後の状態が安定しない場合は延泊となる可能性があります。
院内感染を防ぐ目的で、皆様に混合ワクチン・狂犬病ワクチン・ノミ・マダニ駆虫処置をお願いしております。自宅で予防しているにもかかわらず院内で寄生虫感染が確認された場合には追加で駆虫処置を行います。
当院はTNR(捕獲・避妊・リリース)活動は行っておりません。そのため、野良猫・地域猫ということで費用が安くなることはありません。
基本的に面会は可能ですが、スタッフまでお問い合わせください。なお、面会は診療時間内となっております。
ガチョウ様呼吸(ガァガァ)やいびき(ズーズー)といった症状がある場合、麻酔リスクが上昇します。特に重度の短頭種気道症候群と判断される場合、術後に急変する可能性が顕著に高くなります。一般的には短頭種気道症候群の治療(内科・外科)が優先されるため、避妊去勢手術の受け入れをお断りすることがあります。ご理解のうえお申し込みください。